刑事裁判とは、検察官が起訴した被告人に科すべき刑罰を判断する手続です。起訴後14日以内の1回の裁判で終結することもあれば、数か月、数年にまで及ぶこともあります。
刑事裁判と民事裁判
刑事裁判とは、検察官が起訴した事件について、被告人に科すべき刑罰を判断する手続のことです。訴える人は被害者ではなく検察官であり,訴えられる人は被告人です。
一方、民事裁判は金銭トラブルや土地や物の所有権を争う手続のことをいいます。民事裁判では、誰でも訴える側(原告)又は訴えられる側(被告)になり得ます。
したがって、一つの事件を犯してしまったとしても、被害者から弁償金や慰謝料を請求された場合は民事裁判、検察官に起訴されて刑罰を決する場合は刑事裁判となります。
なお、一般市民が原告となって、国や地方公共団体を被告として、運転免許停止処分等の行政処分に不服を申し立てたり賠償金の支払いを請求する手続として、行政裁判というものもあります。
起訴から公判期日までの流れ
検察官が起訴した場合、まず被告人に起訴状の写しが送達されます。この際、弁護人選任権に関する書面が同封されていることがあります。私選の弁護人を選任する場合は、必要事項を記載し、期日までに裁判所に返信する必要があります。国選の弁護人を選任する場合も同様です。
弁護人が決まると、次は裁判の日程が組まれます。弁護人を選任している場合、弁護人と裁判所、検察官が協議して日程を決めるので、希望があれば事前に弁護人に伝えておきましょう。事件の審理が複雑化しそうな場合は、裁判の前に公判前整理手続という事前準備が行われることもあります。
裁判当日は、裁判所で弁護人と待ち合わせをし、一緒に法廷に入る場合が多いです。勾留されている場合は、法廷まで警察官に連行されます。裁判での服装については、裁判官や被害者の方に悪印象を与えないよう、事前に弁護人からアドバイスを受けるようにしましょう。
なお、勾留されていて法廷まで警察官に連行される場合、腰縄と手錠がつけられるため、傍聴席にいるご家族らに大きな衝撃を与えてしまうことがあります。そのため、自宅から裁判所に出頭できる保釈は重要であるといえます。
公判期日1~冒頭手続~
刑事裁判が始まると、被告人は裁判官から証言台の前に立つように促され、氏名・生年月日・住所・本籍・職業について質問を受け、黙秘権があることを伝えられます。
その後、検察官が被告人の犯した犯罪についての事実等が記載された起訴状を読み上げ、被告人は起訴状の事実について内容に間違いがないかを答えます。否認する場合は「身に覚えがありません」、しない場合は「間違いありません」等と答えます。
公判期日2~証拠調べ手続~
冒頭手続の後は証拠調べ手続に入ります。証拠調べ手続において、検察官は裁判官に対して被告人の有罪を主張するために、捜査段階で準備した供述調書等の証拠を提出します。検察官側からの証拠に納得が行かない場合、被告人側は共犯者や目撃者に証人尋問を行うことができます。
また、被告人側も弁護士を通じて立証活動を行うことができます。示談が成立している場合の示談書や、被告人の恵まれた家族・知人関係は裁判官の心証をよくして裁判を有利に進める大切な証拠です。
刑事裁判においては全ての事実認定が証拠によってなされるため、たとえ被告人に有利な証拠があっても、裁判官に提出しなければ判決には何も反映されません。そのため、証拠を出し忘れないように注意しましょう。
公判期日3~最終弁論~
証拠調べが終わると、検察官は論告・求刑といって、事件を総括して意見・科すべき刑罰を述べます。検察官は被告人の犯行の悪質な部分に焦点を当て、最後は「被告人を懲役~年に処するのが相当と思料します」と締めくくります。
検察官の論告・求刑に対して、弁護人は被告人の犯行の悪質とまではいえない部分に焦点を当て、裁判官に刑の減軽を求めます。冤罪の場合は、無罪判決を求めます。弁護人の後には、被告人の最終陳述の機会が与えられます。
判決宣告以降
以上で審理は終結し、裁判官は日を改めて後日被告人に判決を宣告します。即決裁判という裁判の場合は、起訴されてから14日以内に裁判が開かれ、原則としてその日に判決が宣告されます。
第一審判決に不服がある場合は、高等裁判所に控訴し、控訴審判決に不服がある場合は、最高裁判所に上告します。控訴と上告は判決確定までの上訴期間内にする必要があります。
有罪判決が確定すると、執行猶予が付いていない場合は刑の執行がなされます。
刑事裁判に要する期間
刑事事件にかかる時間は事件によって様々です。犯罪事実について争いのない簡易な事件であれば、審理のための1日(30分~2時間)と、その約2週間後の判決宣告のみで終了します。即決裁判の場合は、通常、審理と判決宣告を同日に行うので1日で終了します。
これに対して、犯罪事実や証拠を争うような複雑な事件では、証人尋問や鑑定のために裁判が長期化し、起訴から数か月、あるいは数年かかることがあります。また、犯罪事実等についての争いがなくても、事件が複数の犯罪に及ぶ場合は、裁判の終了までに1年以上かかることもあります。
ちなみに、資料によれば、第一審の審理時間は以下の通りです。
自白事件 | 否認事件 | |
---|---|---|
簡易裁判所 | 2.0か月 2.0回の開廷 | 6.6か月 5.0回の開廷 |
地方裁判所 | 2.7か月 2.4回の開廷 | 8.9か月 7.0回の開廷 |
<刑事裁判の流れ>
1、起訴 |
2、公判期日の指定 |
3、公判期日 ①冒頭手続き ・被告人への人定質問 ・検察官による起訴状の朗読 ・裁判官による黙秘権告知 ・被告人、弁護人の陳述 ②証拠調べ手続き ③最終弁論 ・検察官による論告・求刑 ・弁護人による弁論 ・被告人による最終陳述 ④結審 |
4、判決宣告 |
(5、上訴) |
6、判決確定、刑の執行 |